Archive for October 4th, 2004

すでに終わってしまったライヴ告知と『歌行燈』

Monday, October 4th, 2004

昨夜も、実にわくわくドキドキ、緊張するけど止められない黒井さんとのライヴであった。実に鍛えられた。追い詰められもし、追い詰め(?)もし、実に普段の実力を大いに出し切らざるを得ないライヴのひとつとなった。まったく「ブルーズやってる気はないよ」と言いながらブルーズ責めにしないで欲しい。かくいう私は、教会旋法責めにしたわけだけど。(うっ!ブルーズもゴスペル発と考えれば「教会旋法」のひとつか?)

自慢ではないが、最近のライヴはどれも本当に現在持っている実力を出し切るという意味では、どれも終わったあと後悔がなく、実にさっぱりした「後味」のことが多い。気持ちいいぜ。

bccで皆さんにお送りしている直前ライヴ告知なのだが、今回は2日前くらいに黒井さんとのデュオ・ライヴを告知した。そのメールの中で、最近彼と一緒に観た成瀬巳喜男『歌行燈』を取り上げたので、ここに若干の加筆などを加え、ここにメモ替わりにアップしておくことにする。

「黒井*entee デュオ」

10/3(日)8:00pm

会場:荻窪グッドマン

(2人によるフルのデュオ・パフォーマンスは、今度が2回目。)

『歌行燈』

Monday, October 4th, 2004

実は、昨夜、今度の日曜日に久しぶりに共演する黒井さんが拙宅にやってきて、しばし話し込んでいきました。前回のライヴCDを一緒に聴いて腹を抱えて喜んだり。別に、今度のライヴのための具体的な「作戦」を練りに来たわけではありません。ただ、黒井さんの身に最近起こった「あること」を私の耳に入れるためだったようです。それについては、???・・・ふむふむなるほ ど...と言う感じです。(その話は...おっと興味のある人は黒井さんに直接訊いて下さい。)

その興味深いお話への「お返し」という訳ではありませんが、私は自分の大好きな映画『歌行燈(うたあんどん)』(1943, 監督:成瀬巳喜男 http://www.jmdb.ne.jp/1943/bs000130.htm )をビデオで一緒に見ることにしました。 黒井さんなら劇中の能やその物語の素晴らしさ、そして山田五十鈴の芸に感動し、歓びを共有できるに違いないと思ったからです。

この映画については、いずれ書こう書こうと思っていたんですが、書かず仕舞いできましたが、ようやくちょっと書いてみます。これは、「歌/音楽/芸」 が、人を出会わせたり、殺めたり、再会させたり、結びつけたりするという、 正に人の世の「音楽つながり」「音による縁」の不思議を、実に鮮やかに描いた類い希な映画だと思っていました(黒井さんも「ベスト五指に入るかも」 と言っていましたが、私もそれはまったく誇張じゃないと思います)。これは、とても帝国日本が戦争をしているときに創られたとは思えないほど、「戦意昂揚」などとも縁遠い、純粋に芸道に関する傑作映画です。泉鏡花の原作(私は未読)を元にしています。

映画を見ていて感心するのは、能楽師の身に付いた作法、近親でも節度を保った相互的な礼儀、真に善い芸を見出したときに見せる率直(素直)な反応と互いに払う敬意、理解し合える者同士が集まると自然に始まってしまう即席の音楽行為 (セッション)と言った、あらゆる音楽に関わる者達がそうであって欲しいと思わず願ってしまうような、理想的な音楽の在り方や関わり方が、すべて出てきているような気がするのです。

「歌はこころの外に掲げて道を照らす提灯(ランタン)なんだ」とでも言いたいような映画(原作?)ですが、そこに描かれているような音楽絡みの不思議は、実際に自分の周りでもちょくちょく起きています。でも私の作る音楽がそれを起こしているとは、未だ言えないような...。

さて、今度の黒井絹さんとのデュオライヴですが、そこで作られる音が「歌行燈」ならぬ「音行燈」となって人を結びつけたり出会わせたりするのだろうか、とすでにわくわく期待を感じているのです。