この映画のキャスティング的な特長は、いつも大活躍の藤純子が完全に脇役である一方、魅力溢れる「社長」を南田洋子が演じているところ。ぜんぜんリアリティのない網元衆の元締め役として丹波哲郎が出ている所など。そして、「今カタギ元ヤクザ」、早まって「鉄砲玉」のように敵方に飛び込んで「犬死に」する若造役をおそらく二十代の北島三郎がやっていることなど。
深川木場を舞台にした第1話、大阪を舞台にした「浪速編」に引き続き、第3話の「関東編」だが、冒頭から登場する高倉健が、よく喋りよく飲む軽いノリの人物。全体的に敢えてそういう調子を押し通して、「今までの侠客モノと違う」感じを出そうとしているようだが、これは、築地という場所柄か? 高倉健が船に乗り遅れるおっちょこちょいの水夫役というところから、すでに相当違和感がある。それに対して、鶴田浩二の登場の仕方の「堂に入った」こと。なかなかのヤクザである。最後に「キメ文句」があって何とか観る甲斐ありの感を取り戻したが、全体としてはちょっとどうか? 南田洋子の魅力があるから許せる。
最後のキメ台詞
江島勝治(鶴田浩二):鶴田
緒方勇(高倉健):高倉
栄(南田洋子):南田
すべてが終わり、警察が来る。水産組合に切り込んだ江島勝治と緒方勇の二人に手錠が掛けられる。
鶴田:おう、待ってくれ。
張本人は俺ひとりだ。この男には何の関わりもねえ。
高倉:(間)勝つぁん。あんたんだけ、辛え思いさしたんじゃ、俺の立つ瀬はなくなるよ。
鶴田:(呆れ気味に)おめえも付き合いのいい男だなぁ。
(間)(栄に向かって)お嬢さん。こいつぁ、すぐ帰えって来ますよ。待っててやってくれますね。
南田:(だまって頷く)
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