Archive for November 28th, 2004

sonica mundi、その他

Sunday, November 28th, 2004

黒井さんが去った後の午後は、吉祥寺まで買い物。例の如く、神田川沿いを井の頭公園まで徒歩で行く。途中の三鷹台で「軽く」ブランチ。途中でかなり紅葉しているところがあってビデオの静止画モードを使った幾つかのショットを。

オーディオユニオンでサウンドインシュレータなどを見たあとで一旦家に戻るが、1時間ちょっとでまた外出。今度はヴィオロンにsonica mundiを聴きに出たのだ。途中で古本屋に寄り、鈴木大拙の本(『日本的霊性』)とドゥルーズの『スピノザ─実践の哲学』を見つけて購入。まだ散財。ちょうど読んでいる「ある本」にずいぶん言及があったのと、共演者のひとりが私に勧めてくれたためスピノザの「エチカ」などに興味を持ち始めていたため。

著者のドゥルーズはソーカルの「知の欺瞞」で徹底的に批判されている当の本人。いわゆる「ポストモダン」のおひとりらしいが、自分で読むのはこれが初めて?…だろう。スピノザの入門書として良いのかどうかも分からない。これも一つの縁。ソーカル批判の対象になるようなbullshit-makingな「変な文章」だったら途中で止めるかも知れない。

ヴィオロンで聴いたsonica mundiは、6人とか7人という大所帯の「即興グループ」もんじゅ連の池上さんも参加している。こう言ってよければ、聴いていて肩の凝らないある種の調和を大事にする人たちの集まり。大所帯の即興で陥りがちな「音の飽和」を誰ともなく上手に避け、常に音の間がある。幾人かはミニマリスト的なアプローチをし、それが音の分裂を引き留めている。環境音楽的で室内楽的な即興と言ったら叱咤されるだろうか? とにかくこの人達が集まってこそ起こりうることが起こっていて、しかもそれが絶妙のそこでしか食べられないエスニック料理のようでもあるのだ。わたしなんぞ、ひっくり返ってマネをしたって出来そうもない、彼ら独自の音楽なのである。

本を読みながら聴くという行儀の悪さだったが、それが出来る心地よい音楽であるのだ。もちろん、最後はどうなるか少しハラハラしたので、本を閉じてじっと聴いていた。

東野さんとの再会/ギリヤーク尼ヶ崎さんのパフォーマンス

Sunday, November 28th, 2004

土曜から、日曜に掛けての長いお話。現在東京でベンガル式巻物紙芝居“ポトゥ”の原画展をやっている語り部“ポトゥア”の東野健一さんの最新作品を見るのと、昨年のコラボレーション・パフォーマンス以来1年以上ぶりの再会を果たすために新中野へ赴いた。場所は無寸草という知る人ぞ知ると言われる「画廊」である(この場所についてもいろいろ書けることはあるのだ)。昨年のコラボレーションで共演をお願いした盟友・黒井絹さんにあらかじめこの「イベント」のことを告げてあったので、現地で落ち合うことにもなっていた。

イベントというのは、今回の「原画展」開催中、この土日の2日間やることになっていた東野さんの企画のこと。自分の行った土曜日は、噂に名高い「大道芸人」ギリヤーク尼ヶ崎さんの「映画とお話」、というものだ。私は昨年のパフォーマンス録音の音源をコピーして手渡ししたいという希望を直前になって無理矢理実現しようとしたために、予定より遅れて現地に着いた。そのため、ギリヤークさんの映画はすでに始まって20分ほど経っていたようだ。

到着して初めて来た無寸草の雑然とした土間を通って暗い階段を登りきったが、闇で現場の様子が右も左も分からない。どうやら思ったよりこじんまりしたスペースであり、一角に小さなスクリーンを設置して件の映画を映写している。しばらく映画を観ていて目が暗闇になれてくると、その場所の突出したユニークさと、まるでそこにずっと飾ってあったかのような原画展作品の演出の両方に驚く。しかし、すでに最初を見逃している映画を観ることに神経を集中することにした。ギリヤークさんの踊りの素晴らしさは、連れ合いと熱烈な東野さんの話で聞き及んでいたが、映画とは言え記録となっているその踊りを観ることで、ギリヤークさんの生き方や一つの作品を追究する姿勢などに感動を覚えていた。やはり話でその内容を聞くのと観るのとでは大差がある。

良く時間を掛けて作られているギリヤークさんの『祈りの踊り』というドキュメンタリー映画が終わると、普段数百人の見物人相手にパフォーマンスをする彼自身が10人弱の鑑賞者に向けて自分の踊りと半生を振り返る話を始めた。「トーク」というのを勝手に対談のように思っていたので、東野さんが聞き役となってギリヤークさんとの会話が聞けるのかと思っていたが、実際は1時間くらいに及ぶギリヤークさんの語りの独壇場であった。それ自体が聞く者を引き寄せる魅力的なものだった…

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