Archive for February 21st, 2005

やっぱりいた、電柱愛好家!

Monday, February 21st, 2005

電柱、というのは「前向きなランドスケープ」を考えなきゃならない立場の人からすると、「頭痛の種」という位置づけであっただろうと漠然と思っていたし、電柱や電線のない空、というものがあったら、向こうの景色ももっと楽しめるのに、とか、カメラアングルがもっとカッコ良くなるのに、とか、考えたりもした訳ですが、今回のように電柱に親しみを覚え始めると、ある種の発想の転換が起こる。

電柱や電線に十字架を見出す子供に共感する信仰詩人もいれば、電線に五線譜を見出す詩人の心もある。電柱や電線を風景の一部として受け入れるということができるということは、別の意味で前向きな態度でもあろう。

しかし、電柱や電線を溺愛する心が内面に芽生えたら、今度は街を歩いている間中、喜びで満ちあふれるということに、なるはずだ。知らない街に行くと、観たこともないような電柱を見つけようとするだろうし、思いがけない電柱と出会えると、歓喜を覚えたりする訳である。そして、そんな人が、世の中にはやはりいらっしゃるのである。それを知ってなんか嬉しくなってしまうのであった。

以前、タモリクラブで「インターチェンジの愛好家」というニッチな趣味の人が出ていて、「いいインターチェンジ」や「わるいインターチェンジ」というのを論じたりしているのを観たことがある。こう言っては失礼かもしれないが、まさにそういう類いの「電柱フェチ」という方がいらっしゃることを知った。どういう電柱が好みなのかとか、そんなことも面白いのだが、写真キャプションに「高圧線路の碍子配置が2:1 架空地線の腕金が柱の真中にある。一番好きな格好。柱上変圧器が低圧線路の下にあれば最高。」などとあると、もう嬉しくなってしまうのだ。ボクも電柱を観てそうした美を自分で見出せるようになれれば、もっと「前向き」に日本の景色、独自の景観を楽しむことができるようになるだろう。

あの電柱は誰のもの?

Monday, February 21st, 2005

光を入れたい。CATVの常時接続が速いことはつとに知られたことだが、ウチで受けているCATVのプロバイダ・サービスも、実は老朽化したアパートの同軸ケーブルが旧式のために100パーセントのパフォーマンスが得られていないと言われた。実際、前に住んでいたときも同じサービスを受けていたが、その時の方が速かった。どうも同軸ケーブルには完全な双方向をサポートできるものと、テレビ受像をするためだけの、ネット接続には不完全なものとがあるようなのである。

それならいっそのこと光を。ということで、申し込みを始めたが、いろいろなハードルがあってそれと現在格闘中。実は、ケーブルを引き込むためのNTT柱(電柱)というのが、うちのアパートの敷地(庭)内にある。「それを利用すれば、まず引き込みは大丈夫」というのが引き込み工事の現場の説明。そのNTT柱の利用は、光会社がNTTから利用許可を得ればできるのであるが、私有地内の電柱なので、その電柱には「個人的な所有者」がいるわけで話がややこしい。

いずれにしても、光を引くにあたって若干の工事が伴うので部屋のオーナー(家主さん)の許可は受けなければならないとのことで、久しぶりに家主さんと直接話する。と、「外壁をあまり傷つけない限りは引くのは自由」とおっしゃるので、ひとまず安心したのだが、その電柱の持ち主(というか、土地の所有者)がだれなのかということになると途端に歯切れが悪い。だって、自分で買った分譲住宅で、庭も自由に使っているくらいなんだから、土地が誰のものなのか、ということくらい知ってそうなものなのだが、1週間後に話したときも「やっぱりわからないんです。誰が庭の管理をしているのかも今は不明なんです」というのだ。あの鬱蒼と草木が生い茂っている庭で、そんなおかしな話があるか、と思うが、私有敷地内にある電柱の「持ち主」が分からない。現実的には光を引くにあたり、許可が必要なのだと説明しても、「使うために立てたんだから、何で立てた人の許可を得なきゃいけないんだ」とさえ言われたのである!

光会社の工事請け負い業者の方から掛かってくる連絡担当の女性も、辛抱強く事情を聞いてくれる。彼女にしても一本でも多くの敷設工事を成立させることが仕事だから、結構熱心にあれこれ考えてくれるのだろう。話しているうちに、だんだんこの担当者に親しみを覚えてくるほどである。

一応、すべての事情を伝えたが、結局「電柱のある庭の持ち主が分からない」という異常事態のために、やはり工事が進められないことが決定的になったので、この際、その持ち主が誰なのか「NTT自身に訊いてみたらどうか」ということになった。つまり、NTTはその電柱を私有地に立てた訳だから、NTTの方が誰に依頼されて立てたのか把握しているはずだ、ということである。なるほど。しかるに、光会社からは誰の土地かということをNTTに直接聞くことは個人情報に属することなので、出来ればしたくない(そう言ったんだよ)。だが、光を引き込もうとしている希望者が電柱の所有者に直接連絡をして許可を得るという理由なら、連絡先を教えてくれるかもしれないというのだ。ふむふむ。この判断が正しかったのかどうかは分からないが、確かにそうかもしれないとその時は思い、「NTT東日本 ネットワーク事業推進本部 相互接続推進部」というところに連絡をしてみる。すると、「杉並区内の電柱」については、NTT ME東京北支店に連絡しろ、とのこと。言われた番号に電話すると、今度はその番号が変更されていて、変更された番号へダイアルすると、やっとそうしたことの担当と思われる人と話をすることが出来た。まったくひやひやする。

だが、「一応調べてみる」とは言ってくれたものの、分からない可能性もあると言う。その場合、結局また部屋のオーナーに話が戻ってしまいそうであったので、それではこれまでいろいろ連絡した意味がない。まるでカフカか何かの小説のようだぞ。他に何か方法はないかと苦し紛れに訊くと、「土地の所有者というのは調べるのは実は簡単なんですよ」と電話越しに少し「照れ笑い」しながら言うので、どうやるのかと訊くと、結局は登記上の問題なので、地番表示を使って調べれば地主は分かると言うのである。???。そのトウキショというのはなんなんですか?どうやって調べるんですか?とおそるおそる訊いてみたら、それは法務省の管轄だと言う。なんだか簡単どころかややこしい話になってきたようにしか思えない。そんな探偵まがいの調査をしなければ「光」を引けないなんて!

http://info.moj.go.jp/fu-man.htm

というようなページを眺めながら、「こんなことオレが調べること?」とか思う。外を歩いていると、今度は電柱が気になるのである。恐ろしくいろいろなケーブルが張り巡らされているあの電柱一本一本にドラマがあるのである。と、のんびり夕闇迫る空にそそり立つ電柱を順繰りに眺めながら、のんびり行こうと決めた次第である。