Archive for March 27th, 2005

うそまみれのニッポン3

Sunday, March 27th, 2005

キャッシュカードを持っている人なら、ここ1月くらいの間に大抵の方々が銀行から「キャッシュカード限度額設定届けのご案内」みたいなDMを受け取っているだろう。そして、それに先立って「ある特定国」からやってきてカード偽造を組織的にやっているらしい「窃盗団」への警戒を促すメディアの過熱的な報道も見聞きしているだろう。「キャッシュカードが危ない。磁気式のカードは簡単にコピーできる。ICカードへの切り替えが急務だ。」こんな報道は、ひと月ほど前まではもっとも熱いニュースだった。

「限度額設定」というのは、面白いことに銀行からの一方的な通達でない、ということが実に注目に値する。つまり、カードを使っての自分の預金からの現金下ろしの額について、“銀行預金者であるわれわれが「自発的」に上限を設ける”という気の利いた手続きを採らせているのである。銀行が、預金者の1回に下ろせる現金の上限を決めるのではなく、預金者自身にその設定を「迫って」来ているのである。自己責任で。そして、一連の「キャッシュカードが危ない」という危機意識を煽る報道の波に乗って。

だが、ちょっと考えみれば分かることだが、銀行から下ろせるキャッシュの上限を設けたら、それは、本当に大金を必要とする事態が起きた時に困るのは、預金者自身である。たとえば、銀行が破綻してみるとしよう。そのときに起こることは、自分の設定した「上限」の為に、「自らが自らのために預けた自分自身のお金」を、自分の自由に下ろせなくなるという事態である。「取り付け騒ぎ」が起こった時に預金者が銀行に殺到しても、「お客様自身が設定した利用限度額」の契約のために、「これ以上、今日はお返しする訳には参りません」ということが起こる訳である。クレバーだね。

生涯遭ったこともないし多分遭うこともない「カード偽造団」への警戒心を煽って、「ご利用限度額」を自ら低めに設定した、銀行のお客様たちは、いざという時に、自分のお金を下ろすことができない訳です。それも自発的に設定した限度額のために。

だいたい、腹が立つのは、「ご利用限度額」という言い草である。われわれの稼ぎは、「給与振込」と「源泉徴収による税金支払い」の抱き合わせという世にも希なる不可思議な銀行都合の制度でもって、われわれのなけなしの稼ぎを根こそぎ「投資」させられているのであって、その給与をほとんど無条件に「ご利用」しているのは銀行であって、自分で稼いだ金を自分の好きな時に使うことを「ご利用」とは何事だろう、と思う。

いままでだって銀行からの「ご親切」は、われわれ預金者の利便のためだったことは一度もなく、無条件に巻き上げた人の現金の上にあぐらをかいている銀行のためだった訳だが、この「ご利用限度額設定」という「ご親切」も、そうしたことにオブラートを着せてわれわれを騙すだけの「ウソまみれのニッポン」の一例に過ぎないんじゃないだろうか?