「花」
Tuesday, April 12th, 2005花盛りの春だった 夢からめざめた修行者は 蒼ざめて師匠をゆすり起こした
弟子:お師匠様 お師匠様
師:なんだ 騒がしい
弟子:ごらんになりましたか あの花を
師:そのために ここにおまえをつれてきた
(間)
弟子:このままでは 僕たちは 花になってしまいます
師:それは どういうことかな
弟子:僕たちは 咲いてしまえば あとは 枯れて 朽ち果てるということです
師:(沈黙)
弟子:ということは いちど咲いてしまえば 僕たちは またやり直しだ ということです
師:(頷く)
弟子:(がたがた震える)
すこしばかり寒い 遅咲きの春の ある午後だった