Archive for May 30th, 2007

ノスタルギアとは何か(定義1)

Wednesday, May 30th, 2007

定住革命

「未開」が文明化以降の時代よりも良かったとか、縄文文化の人びとはそれ以降の弥生文化よりも素朴でありつつも豊かであったとか、定住民よりも非定住民の方がストレス・フリーで創造的な生活をしていた、というような、ある種低次元なノスタルギアに裏打ちされたかに聞こえる言い方で表される「先史時代の人類についての憧憬」というものがある。これは、その後1万年以上を掛けて続く緩慢なる定住革命、そして直後にやってくる農耕革命、そして内燃機関を発見した後の産業革命といった「近代化」や「現代化 modernization」の時代を生きるわれわれの方が“生きるのにどれだけ有利になっていると思っているのか!”という、非難にも似た理性と科学至上主義で以て、一笑に付される可能性のある言い方だ。

だが、「昔は良かった」という言い方に潜んでいることの意味は、当該のそれぞれの時代に生きているヒトの食料事情や衛生状態といった生活条件や、平均寿命で表される生物学的な個体生存上の優位における比較の中に見出されるものでは断じて無い。ノスタルギアという言葉で低く観られがちなその感覚は、単に詩的なセンスだけで表明される吐息ではなく、むしろ変わらぬ生存と持続性によって価値を認められたものなのであり、現代人が言語化を最も不得意とする生命の価値についてなのだ。

つまりもっと分かりやすく言えば、どちらが生き残りの上で有利であるのか、いや、どちらがより神話として記憶化されるほど大規模かつ悲劇的な大量死を回避するのに有利であるのか、という、すでに生まれて仕舞った人類個々人の、公平な生存条件の実現という観点の、詩的表現に過ぎないのである。

Ω祖型の事例増える

Wednesday, May 30th, 2007

Gaza Antiquity Olmec Tablet

2005年10月から2006年2月までの間、当entee memoにて掲載した「金剛への第一歩〜Ω祖型とは何か」のシリーズは、多くの図版を牽いて古代から伝わり反復されるひとつの祖型的図像の意味を大胆に解き明かし、「古代人」がわれわれに伝えようとした過去の重要な出来事について注意を喚起しようとした。

(こちらは古い記事が最も下に来るというblogらしい設定になっているので、下までスクロールダウンしていって、最初から順序通りに読まれるのもよいし、後の結論からだんだんに後に遡っていくのも良い。いずれにしてもどちらが面白いかといえば、書かれた順序通りに辿っていくことだと思われるのだが、本と同様、必ずしも読者に最初のページを開いてもらえるかどうかは分からないのである。)

昨年の秋から今年にかけて立て続けに米大手メディアに特集記事として古代の遺物の画像が伝えられたが、その中にかなり典型的と言っても差し支えないようなΩ祖型的な象徴的図像が登場していた。遅ればせにほぼ同時にこの二つの記事の存在を知るに至ったので、それをとりあえず紹介して自分の備忘録ともしておく。おそらく父の死とその後の対応で忙しかったために目に停まらなかったのであろう。

そのひとつは、TIME誌のJune 4, 2007(2007年6月4日号)のp. 49のGlobal Adviserというセクションで組まれたもので、「The Glitter of Old Gaza. Inspiration lies in Palestine’s antiquities: 古代ガザの絢爛。パレスチナの遺跡にインスピレーションはあった」と題される記事。

TIME June 4

ここには「台座 + 柱+ 炸裂する光」でも取り上げたようなカトリック聖体顕示台(モンストランス)(a)や愛染明王(b)のような「台座 + 支柱 + 光輝」と思わしいΩ祖型図像が「3回」も繰り返えされて示される石板(タブレット)の破片写真が掲載されている。アラビア語(?)のカリグラフィーと思われる文字の図案化されたものが見られるが、何が書かれているのかはきわめて興味深い。

DISCOVER誌のJan. 2007(2007年1月号)のp. 49の「ARCHAELOGY - Oldest Writing In New World Found: 考古学──新大陸における最古の文字発見さる」と題される記事。ここで掲載されているメキシコで新たに発見されたオルメカ文明のものと思われる文字盤には28種、合計62の文字刻まれている。

Discover

Overall tablet

記事によればこの文字はトウモロコシなどを含む象形文字と思われるというが、そのトウモロコシを思わせる転倒型のΩ祖型、饕餮(とうてつ)を思わせる三本足(三位一体の世界像)、そして大林組の鬼瓦にも共通するような「あからさまな真性Ω祖型の図像」などが含まれている。これはホピ・インディアンの神話に登場する「落下する灰のつまったヒョウタン」や、ナヴァホ・インディアンのサンド・ペインティング(砂絵)にも見られる「落下するシャトルコック」(c)のパターンを強く連想させるもので、実に戦慄すべき図画内容なのである。

「羽子板の羽根にしてもバトミントンの「弾」にしても、それらが同じような形状をしているのは、比重の高い(重い)材料でできた先端部とそれに取り付けられた比較的比重の低い(軽い)材料でできた基部である。… 一定の方向を保ったまま飛び続けるという目的を果たすなら、それらは同じような形になるであろう。それはまさに時代や状況とに関わらず「機能が要請する形状」というものは大体同じような条件の形体を共有するからである。 」(自著 金剛への第一歩──Ω祖型とは何か[3]より引用)

monstrance(a)

aizen_myoo(b)

Atomic bombs Shuttlecock(c)

こうして見ると、古今東西どの文明にも共通して見出せるのは、このΩ祖型だというのはより強く裏付けられるように思えるのである。

以下のブログもこのニュースの発表の時点で取り上げていた。

http://blog.livedoor.jp/hvw_hanai/archives/50757022.html

http://blogs.dion.ne.jp/bunsuke/archives/4160278.html

全く遅ればせの、驚きと紹介なのであった。