Archive for July 28th, 2007

“ヴィーナスの丘”と褥の皺と [4]

Saturday, July 28th, 2007

Madeleine mold

ラテン語名、Venus/Uenus ヴィーナス/ウェヌスが、現在のように「太陽系における太陽から2番目の惑星」の意味で使われるようになるのは、文献的には1290年のこととらしい*。すなわち、文献学的には「ヴィーナス即ち(日本語の)金星」というのは、千年を遡ることができないことになる。

* ONLINE ETYMOLOGY DICTIONARY

だが「ヴィーナス」以前に、金星が「性愛の女神」やそれに準ずる意味の神話上の登場者の名称で呼ばれるようになる例としては、ギリシア時代の「アフロディーテ Aphrodite」を忘れるわけにはいかないし、古代メソポタミアのアッカド語の「イシュタル/イシュター Ishtar」、またシュメール語の「イナンナ Inanna」というのが先行する。そしてそれらのどれもが「明けの明星」や「宵の明星」(要するに「太陽系の第二惑星」)の意味でも使われているのである。このように考えると、ラテン語においてウェヌス(ヴィーナス)の名で伝えられるもの──「性愛の女神」と「第二惑星」の両方の意味を持つ名称──の歴史は、少なくともわれわれの歴史時代の最古層にまで容易に遡ることができると言うことができよう。

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