Archive for July 31st, 2007

《宗教学》が、信仰から分けられる必然

Tuesday, July 31st, 2007

これは、筆者自らの内部に生じている宗教や宗教現象についての、永久に葛藤する考察を二者の対話の体裁をとって表現した「宗教学者と宗教家(信仰者)の対話」というシリーズへの補遺である。


言ってみれば、大なり小なり熱心な宗教の研究家というのは、単に行き当たりばったりに個々の宗教関連事象を対象化したり、研究成果たる関連書籍を渉猟したりしているのではなくて、往々にして宗教的事象を「文脈:コンテクスト」として捉えられるほどのまとまった量で対象化するものであるし、そうした横断的な研究がもたらす宗教についての概括的様相には、個々の宗教的事象から単独で得られる発見や体験の質自体の重要性と同等か、もしくはそれ以上に興味深いことがある。少なくともそのことを知っているということなのだ。そして宗教史家が宗教史家であり、宗教学者が宗教学者である理由というのは、こうした歴史的文脈で「宗教の遷移を理解する」ことができるような歴史鳥瞰的な眼を獲得したということに外ならない。だがもちろんこれは専門的な宗教研究家だけの特権ではなく、あらゆる信仰者や宗教家が持っていても「損はない」ひとつの視点ではある。そこまでは便宜上、認めても良いだろう。(もちろん、信仰者が自分の信仰の対象たる神を相対化するなどということは百害あって一利無しだと言われそうなことであるが、20世紀に書かれた神学者による記述を読んでいると必ずしもそうではないことがすぐに諒解されようし、少しでも思弁的傾向のある宗教者なら、他の宗教に対する一通りの関心は抱いているものであって、信仰者でありながら、相対化の第一歩は踏み出しているものなのである。)

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