Archive for July 4th, 2009

図書館から借りた本

Saturday, July 4th, 2009

山崎正和:アメリカ一極体制をどう受け入れるか(中央公論新社)

アメリカ一極体制

読了:まず自分でお金を出して買うような本ではないが、読んでみた。なるほど「政府の御用学者」と揶揄されるのが理解できるような順米的な「思想」だった。それが現実的な生き残りの手法だと言うならまだ分かる。だが、ブッシュや小泉と一緒になって「テロ戦争」を戦うことを最善の国策だとさえ聞こえるような彼のその主張の根底にある「思想」がどのような根拠によって成り立っているのかは、最後まで分からなかった。テロが憎いというところまでは分かるが、それを防ぐ手法が彼の考えるような方法でいいのかどうかも全く分からなかった。「アメリカ一極体制をどう受け入れるか」ではなくて、「アメリカ一極体制はとにかく受け入れよう」というタイトルにすべきだったのにね。

「社交」というものの存在を、それを最大限に生かして生きて来た人間の経験から話されるのは初めてで、なるほどと思わせるものはあった。(あと、文章力もあり、頭のいい人であることもよく分かったな。)

唯一、面白いと思わせる箇所は、後の方に掲載されていた「近代デザインの来しかたと行く末」という短いエッセイであった。「必要があってデザインの歴史を勉強していたら出逢った」らしいが、海野弘の『モダン・デザイン全史』という本を絶賛している。ジョン・ラスキン、ウィリアム・モリス、グロピウス、タウト、モンドリアン、ロイド・ライト、などに言い及ぶ。ライトの祖先がウェールズ人のドルイド教の血脈を持つとか、グロピウスが小さなフリーメーソン的な結社をつくりたいと願ってバウハウス運動が出来たとか、ライトの妻のオルギヴァンナがグルジェフの弟子であったとか、なかなか興味深い記述が、たった4ページ足らずのエッセイの中に出てくるのだ。

共同通信社憲法取材班(堤秀司・豊田祐基子):

「改憲」の系譜〜9条と日米同盟の現場(新潮社)

改憲

読了:こういう地味な事実の積み重ねによる近代史というのは、実にそれ自体が面白い。いつもながら自分の知らないことの多さに驚かされる。それにしてもここで使われている「日米同盟」という言葉自体が、そんな昔から使われていたものではなくて、ここ十何年という短いスパンで起こりつつある、合州国一辺倒の日本の外交政策の傾向を表すものであり、そもそも安保条約だって「日米同盟」とは呼ばれるものではなかった、というあたりは何度も思い出す必要のあることだろう。

大の大人が、「アメリカとの外交」という直接の付き合いを始めた途端に従順になってしまう歴代の総理大臣の変節を見るにつけ、どんな「実力的な脅し」を彼らが受けて来たのかということに興味が湧く。「東京が火の海になる」というようなことを口でも言って、しかも実行できるのは、案外太平洋の向こうの大親分だけかもしれない。いや、火の海にする実行部隊は半島にいて、それにお墨付きを与えるのが大親分なのか?

森達也:世界が完全に思考停止する前に(角川書店)

思考停止

読了(07.08):彼の文章が読ませるものであるとは言わないが、彼のドキュメンタリーの着想には本当に驚かされる。それが実現するのかどうかは分からないが、「次の被写体は誰ですか」という質問に対して、「今上天皇です」と答えていた、という「今上天皇の内なる葛藤」という章は、自分にとってはとてつもなく新しい情報だった。今の天皇がそんなに悩める天皇であったなどということは、普通にメディアの伝えることからだけでは分からない。しかし、森達也は今上天皇に対して、大いなるシンパシーの眼差しを向けていたのであった。このことは知らなかったぞ。

丸山健二:田舎暮らしに殺されない法(朝日新聞出版)

田舎暮らし

読了(07.10):他の本と併読しながら拾い読みしていたら、終わってしまった。丸山氏自身が、田舎暮らしを実践していて半端じゃないサバイバルをしていることはツレの解説などから分かった。そして、誇張はあるにせよ、田舎暮らしの厳しさがそうした経験から来るものであるのも了解できた。これから「気楽な田舎暮らしをしよう」という人にとっては大きな警鐘となるであろう。しかし、彼の伝えたいことの主旨は「田舎暮らしは大変だ」ということではない。「われわれ文明人は、(田舎暮らし出来るほど)自立していない」ということである。まったくもってその通りだと思う。だが、「自立した人間」というものがどういう人間であるのか、というイメージ提供は最後までないし、日々の9割を庭作りに費やし、のこりの1割で創作(文筆)活動をするという丸山氏自身が、本当に「自立した人間」であるのかも、最後まで分からなかった。とにかくあそこまで断定できるのであれば、相当な人物なのだろうなあ、ということくらいである。

飯沼賢司:八幡神とはなにか(角川選書)

途中

藤原俊六郎:堆肥のつくり方・使い方〜原理から実際まで(農文協)

拾い読み