「花」

花盛りの春だった 夢からめざめた修行者は 蒼ざめて師匠をゆすり起こした

弟子:お師匠様 お師匠様

師:なんだ 騒がしい

弟子:ごらんになりましたか あの花を

師:そのために ここにおまえをつれてきた

(間)

弟子:このままでは 僕たちは 花になってしまいます

師:それは どういうことかな

弟子:僕たちは 咲いてしまえば あとは 枯れて 朽ち果てるということです

師:(沈黙)

弟子:ということは いちど咲いてしまえば 僕たちは またやり直しだ ということです

師:(頷く)

弟子:(がたがた震える)

すこしばかり寒い 遅咲きの春の ある午後だった

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