「もんじゅ」も揺れた土曜のライヴ[下]

肝心の<もんじゅ連>のライブは、と言うと徒歩や自転車でグッドマンに来られる人しかお客さんはいなかった。それでも来て頂けたのは全くラッキーである。中には電車とタクシーを乗り継いで聴きにきてくれた殊勝な方までいるのだ。まったく「多謝」としか言いようがない。

今回のライヴは前半の30分はどうも調子に乗れない自分との葛藤があり、焦燥のうちに終えるが、後半で楽しい集中が巡ってきた。他の相方2人がどう思ったかは分からぬ。だが、<もんじゅ連>らしい音が、出てきたと思う。

初めて聴きにきたというある若い男性から、翌日手書きのメッセージを受け取った。ネットもメールもやらないという方である。そのメッセージを読んだら、「音楽をやっていてよかった」と熱い思いが久しぶりに吹き零れた。すぐに本人にその文章の公開が可能かどうか訊いたら、寛大に(そして恥ずかしそうに)「もう渡したものだからそれをどうしようと自由です」と言って下さった。

彼が(そしてそこにいた誰もが)土曜日に聴いた音は、もはや再現不可能である。録音からその雰囲気のごく一部を伺い知ることはできるかもしれないが、生で展開された音そのものを再現することはできない。しかし、それが確かに何らかの体験をもたらし、その人が何かを視たのだということは、その文章から切々と伝わってきた。音楽そのものは言葉に変換できないが、音楽を通じての彼の体験の一部は言語化された。

私は下手な評論や感想文、そして差し障りのない社交辞令の褒め言葉よりも、こうした聴取者の飾りのない内的体験を綴った言葉に真実を信じる。そしてありがたいと思う。その文章から、かならずしも無邪気に喜んでいて良いことだけが諒解できる訳でもない。いろいろなことを学ぶことができる。このように、音楽から言葉へ、そして言葉を経由したエネルギー(炎)の伝達、そしてその「法外な返礼」へのこちらからの感謝と感動があって、それを糧にまた次のライヴへの新たな取り組みに戻ることができる。

こうした永久機関的な、「我々に続ける意思さえあれば、決して減じることのない相互的なエネルギー交換」が、聴取者の方々、そして共演者の仲間とできるならば、他に何を望もうか! これが一度、私がまともに主張して人々から失笑を買った「ギブアンドテイク」の思想の核なのだ。でも与える時は、もちろん何の見返りも期待しないで行なわれるのが前提のエネルギーの交換なのだけど…。

下にそれを転載する。

   ・    ・  ・  ・  ・  ・


  ベースはブーンとした弧の音は空間を示し

  ドラムは大地を作った

 ピアノは水流に似て 雨となり 河となって

オーボエの 響は 草木を茂らせ

    動物たちへとうけつがれてゆく

         生々流々とした 営みは

     互いにふるわしあい、とぐろをまいてゆく

   それは 熱となり、それぞれの源光となって

      もとめあい、ひきさきあっていた。

つちかわれてゆく 受肉は深々たる知覚となり 近くの身体へと変わり

    感情の風を受けとめてゆく

       そして 飢えるがごとく

      源流へ 満ちた親しき闇へと変えんと

    恐怖をふみしめ、生まれては 散っていった。

       断片化した葛藤は

    さけられぬ力となって プロセスをくくってゆく

    満ちて 満ちては ふみつけトドロく

    空間はだきとめるように、ゆれて

受肉は感じたものすべてを その身体としてゆく….

   肺腑からは 慈しむように

          自が風であることを

        語り、伝えあってゆく。

           私たちは、エナジーなんだ

          と ほえたけった…….

     体験は終わった。

全ては 元のままだった 悲しさも楽しさも いつものように

ただあった。鳥も鳥であるし。

   太陽も、私の中には昇らず、朝日となって

    みつめている。

  日々は やはりけだるいまま、もとのままだった。

        迷いかもしれない

       一瞬だけがのこった。

  熱い日々に、最初で最後のような、あの自由が

     悲しくも、あたたかい 苦痛が….

    私は世界であり、世界は私なのだ と

       うそぶいた。

この一瞬だけ、束の間の間だけは、ひとりであることを

 孤独と呼ぶのをやめよう。


     永遠の現在と言われる 感じる身体には

   救い という意識などないのだ ただ 熱い記憶

だけが 時を うがったとき、

        虚々として 自ら風であることを

   微細な風 こと精霊の風が、エンズイにかたり

    かけている。  2005. 7.24 永渕憲太郎

[太字 by entee]

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