文明神話化の速度

文明が失われた後、いかに急速にわれわれの知っている歴史が神話化するか、それを想像してみるのが良い。紙の媒体に書かれたものならば、それを大事に取っておくとか筆写してコピーを作るとか、石に刻み付けるとか、様々な努力によって可能な限り「正確な」記録を取ることはできようが、電子媒体となったものは、ほとんど再現できずにそのまま失われるだろう。

あと我々に残っているのは、記憶を総動員してそれを口伝(オーラル)で伝承することくらいである。人が遠くはなれた人間と会話をするとか映像や画像を送って相手を確認しながら会話をするとか、そもそも人間が空を飛んだとか、宇宙まで人間を送ったとか、地球を周回する装置を空中に浮かべたとか、そのような記憶は3、4世代過ぎれば信じられないようなことになるだろう。またそうしたことを可能にした装置は、使えなくなってスクラップとなってあちこちに放置されるだろうし、必要であれば、そうした道具はバラバラに解体されてまったく別の用途のために再利用されるかもしれない。

こうしてシロアリがたかるようにかつての祖先たちが作った文明の痕跡に巣食って、それぞれがそもそも何であったのかが分からなくなるほどに解体されるのに10世代も必要ではないかもしれない。つまり、自然の力による浸食や風化以上に、人為による解体が一挙に進む可能性がある。それに加えてもちろんこうした自然による破壊が跡形もないほどにそれらを「埋葬」してくれるに違いない。

それでも世代を超えて次のエイオンまで残るかもしれないかつての文明の痕跡は、七不思議としてわれわれの謎解きを待つことになるかもしれないし、あるいは、「庚申塚」や「鬼子母神」あるいは「道祖神」のようなものがその上に建てられるかもしれない。

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