9. 日本侠客伝 関東篇 (1965)

この映画のキャスティング的な特長は、いつも大活躍の藤純子が完全に脇役である一方、魅力溢れる「社長」を南田洋子が演じているところ。ぜんぜんリアリティのない網元衆の元締め役として丹波哲郎が出ている所など。そして、「今カタギ元ヤクザ」、早まって「鉄砲玉」のように敵方に飛び込んで「犬死に」する若造役をおそらく二十代の北島三郎がやっていることなど。

深川木場を舞台にした第1話、大阪を舞台にした「浪速編」に引き続き、第3話の「関東編」だが、冒頭から登場する高倉健が、よく喋りよく飲む軽いノリの人物。全体的に敢えてそういう調子を押し通して、「今までの侠客モノと違う」感じを出そうとしているようだが、これは、築地という場所柄か? 高倉健が船に乗り遅れるおっちょこちょいの水夫役というところから、すでに相当違和感がある。それに対して、鶴田浩二の登場の仕方の「堂に入った」こと。なかなかのヤクザである。最後に「キメ文句」があって何とか観る甲斐ありの感を取り戻したが、全体としてはちょっとどうか? 南田洋子の魅力があるから許せる。

最後のキメ台詞

江島勝治(鶴田浩二):鶴田

緒方勇(高倉健):高倉

栄(南田洋子):南田

すべてが終わり、警察が来る。水産組合に切り込んだ江島勝治と緒方勇の二人に手錠が掛けられる。

鶴田:おう、待ってくれ。

張本人は俺ひとりだ。この男には何の関わりもねえ。

高倉:(間)勝つぁん。あんたんだけ、辛え思いさしたんじゃ、俺の立つ瀬はなくなるよ。

鶴田:(呆れ気味に)おめえも付き合いのいい男だなぁ。

(間)(栄に向かって)お嬢さん。こいつぁ、すぐ帰えって来ますよ。待っててやってくれますね。

南田:(だまって頷く)


監督:佐伯清 サエキキヨシ

脚本:松本功 マツモトイサオ / 山本英明 ヤマモトヒデアキ

高倉健 タカクラケン(緒方勇)

南田洋子 ミナミダヨウコ(市川栄)

長門裕之 ナガトヒロユキ(磯村松夫)

北島三郎 キタジマサブロウ(サブ)

藤純子 フジジュンコ富司純子(光子)

丹波哲郎 タンバテツロウ(八十川波右衛門)

鶴田浩二 ツルタコウジ(江島勝治)

(映画情報-goo 映画から抜粋したあらすじ)

大正の関東大震災後の築地魚市場。風来坊船乗り緒方勇は、ふとしたことから知り会った小揚の磯村松夫の紹介で老舗を誇る間屋“江戸一”で働くことになった。“江戸一”は父なきあと男勝りの長女市川栄がきりもりしていたが、商売は思わしくなかった。それは、東京魚市場協同組合理事長郷田勢之助が石津組のやくざを使って魚市場を牛耳っていたからだ。彼等は小売商人を脅かして、“江戸一”との取引きを妨害していたので、“江戸一”派の商人たちは、仕方なく高値の魚を郷田から買っていた。

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