Botti-Hayashi Collaboration tonight!

類い希な至福のひととき。9時過ぎ、麻酔に掛かったような余韻に浸りながら音友ホールを出て、飯田橋の駅に向かい家路につく。今宵のコンサートをどう語ることが出来よう? 2本のオーボエと弦楽が織りなす至上のハーモニー。いまだにある種の多幸感のリバーブレーションの中にいる。このようなオーボエの響きに再会したのは、一体何年ぶりだろう。

もう何年も前に、ハートレンチングで共演した盟友、音楽上の欠かせない理解者のひとり、林憲秀と、彼の在米時代の師匠ロバート・ボッティ(ニューヨーク・フィルのオーボエ奏者)とのコラボレーション・コンサート。そして、室内楽的な丁寧な弦楽アンサンブル。テレマンのタフェル・ムジークやビバルディの四重奏、アルビノーニのコンチェルト。どれもが、天国的なアンサンブルとなって、音友ホールの高い天井まで浸すように広がった。

そして...


〔紋切り型を畏れずに、言語化を試みる。〕オーボエという楽器の持っている2枚リードの柔らかで贅沢な響き。そしてその音色の説得性のあるトーンの力強さを改めて再認識した。この日は自分がオーボエ奏者であることも、世情の不安も、すべて忘れて、生まれてきた幸せと、この日この場所に立ち会えた幸せとを、童心に帰って、身を投げ出して、味わうことが出来た。

アンサンブルが如何に危うくなっても、フレーズが少々走っても、共演者の「鞭」が入ってすぐに持ち直すそのスリル、美しいソロの曲線、そして落下直前にそれを掬い上げ合流する合いの手(愛の手)、2本の楽器で作りだしているとは思えないほどのサウンドのブレンディング。どれもが内臓を捩る(heart-wrenchingする)ほどの快楽と諧謔をもたらし、思わず腹の底から湧き出す歓びの痙攣を惹き起こす。満足も度を超すと後は「笑い」があるのみなのだ。

ソツがなさ過ぎてもいけない。そこにはエッセンスとなる音楽をひねり出す摩擦と抵抗がないからだ。緊張感が過剰でもいけない。音の上に身を投げ出すだけの信頼感が生じないからだ。その点、この日のボッティ氏と林、そして彼らの仲間たちが作りだしたあらゆる瞬間が、絶妙なバランスで、跳躍と疾走を繰り広げていた。

嬉しいことに、ボッティ氏が「このとても品のあるチラシを国に持って帰るよ」と言ってくれた。こんな形ででも良いコンサートの一助となれたことは嬉しい限りである。まこと、笑顔で始まり笑顔で終わった多幸感溢れるコンサートであった。

林君、コンサートの成功おめでとう! 存分に酔わせて貰ったよ!

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