Archive for October, 1996

『株式会社・石工』
~どうしても知りたかったけど分からなかった人のためのQ&A

Monday, October 7th, 1996

Free M@son Inc. by Giovanni 1996 (translated by entée)

Q:どうしてそのように多くの入社希望者の推薦状獲得のための活動家が(株)石工には後を絶たないのですか。

A:答は簡単です。わたしたち組織が非常な大きさの影響力を持ち、既に数多くの歴史的事業を成し遂げてきたという実績があるからです。

Q:あなたの組織には数多くの口外できない秘密や儀式があると聞きますが、それは開かれたものであるべき社会に対して適切な企業姿勢を保っていると言えますか。

A:えへん(軽く咳払いをする)。まずあなた方は、わたしたち組織に特別な秘密があるという前提で話されていますね。その当否についても議論することはできる、ということをまず申し上げておきたいのですが、ここでは敢えてそのようなつまらない議論は避けることにしましょうか。わたしたち組織は、多くの他の会社がそうであるように利益を追求する企業であり、株主に配当をもたらす義務を持つ株式会社であります。あらゆる会社には共通して企業秘密というものがあります。会社にはそれまでの努力や幸運などによって手に入れた既得権や技術などの有形無形のアセットがあります。組織というものは最小単位の社会であるとも言える「家族」も含めて長年にわたって代々守ってきた既得権、利益を保証するシステムやネットワークを簡単に他人のために諦めてしまうということはしませんね。これは現在の社会そのもののの在り方なのです。歴史を通じて獲得してきた協力関係のネットワークをそう簡単に他の競合する利益追求の団体に引き渡すことをしないのは当然ではありませんか。

さて、あなたがいま言及された儀式ということに関してですが、およそ企業結社といわれるものには、入社式という通過儀礼が付き物であります。社長が入社式において新入社員に何を話すのか、ということはその組織の自由であり、私の関知するところではありません。その後の歓迎パーティなどの席で起こるかもしれない「一気呑み」や「一芸」を始めとする新入社員に対してしばしば強要される理不尽な儀式にくらべれば、わたしたちの儀式は至って健全であり、何よりも、入社希望者がそうした儀礼を通過すると言うことを予め知っていて入社の儀式に臨むという点では、きわめて紳士的であり、社会契約に近い形で新たな社員を迎える用意があるということになります。そして、何よりもわれわれの儀式には「意味」があるのです。

Q:くどいようですが、そうした秘密や儀礼が貴社においてはとりわけ重要な意義を占めていると聞きますが、そういった意味では(株)石工が特殊な結社であるとは言えませんか?

A:どのような企業にもそれぞれに「特殊」な事情があります。企業秘密と一言でいっても、それは企業運営の方法、人事、そして扱う商品の製法に至るものまで、さまざまです。わたしたちが持っている「かもしれない」秘密が、仮に特殊なものであっても、その秘密を持つがゆえに非難されなければならない理由はありません。誰かがわたしたちの内部的な秘密を知っているということになると、それは産業スパイの行為であって、刑法上、処罰される必要があるかもしれませんね。もっとも秘密の本質がスパイ行為によって漏れるようなことが簡単に起こるとは考えられませんが。

Q:(少しいらいらした様子で)お答えになられないのであれば仕方がありませんが、貴社において「秘密」は、どんな役割を果たしていると思いますか。

A:かつて、株式化する時点までは、このような種類の質問に対して、「答えないこと」により、わたしたちの組織の神秘的側面を強化していたものですが、それについても私は大まかな説明を申し上げることができます。

Q:と、言いますと?(身を乗り出す)

A:つまりその秘密は、社員により仕事の重要性を確信させ、仕事を熱心に成し遂げさせます。さらに自分たちが属する組織が類まれなるものでかつ、その秘密の一部を自分が共有しているという意識が当人に巨大な責任と誇りを与える、そんな種類のものです。もちろん、その具体的な内容については申し上げるわけにはまいりません。「秘密」ですから。

Q:...! 私には想像もつきませんが、でも私が結社員になればそれが分かるわけですね。

A:まあ...そうですね。少なくとも入社して間もなく秘密の「一部」を知ることになるでしょう。ただ、会社の末端の新社員と、会社の経営陣が知っている秘密の内容や種類が違うことくらい想像していただけるでしょう。

Q:そして仮にそうなったとしても、それは結社との契約上、口外することもできない、そういうことですね。

A:まさにその通りです(よく分かってるじゃない、という顔をして肯く)。

Q:では、私が入社したいと考えたとき、どのような活動をすればよいのですか?

A:(株)石工に入社するために特にあなたにできることはありません。

Q:なにもない?

A:そうです。というのはわが企業は一般公募は一切おこなっていないからです。これは株式化する以前も以後も同じですが、すべての社員はわが社のメンバーによる推薦、すなわち100%内部的なヘッドハンティングの活動に頼る、完全なスカウト性を採っているのです。敢えて「石工になるための方法」があるとすれば、それは社会において影響を及ぼす有能な人物となること、あるいはすでになっていること。またはある分野において傑出した才能を発揮すること、あるいはすでに発揮していることです。まあ、そうしてじっと待っていることくらいですか。

Q:それで、有名人のあいだに石工のメンバーになる人が多いのですね。

A:(うち消すように)いえもちろん、結果的に有名である人物がわが結社員である場合はたしかに多いですが、何よりも大事なのは、こうした社員が単に有名であるばかりでなく、わが社に利益をもたらすことに尽力することを約束しなければならない...

Q:それは営利団体だからですね。

A:その通りです。

Q:元来、石工は非営利のボランティア団体として長いこと知られていたわけですけれども、このように株式化した理由はなんですか?

A:その件に関しては、わが結社の新旧勢力間でも永らく対立がありました。その経緯を逐一申し上げるのは、ここではできませんが、簡潔にご説明申し上げれば、皆様もよくご存知の、わたしたちの伝統的なモットー<自由・平等・博愛>の中の特に博愛、すなわち友愛などの人道主義は現今の社会では既に古くなってしまった概念で、もはや建て前としてしか働いていないという批判が内部からも出ていました。だれも、純粋に友愛のために人生を費やす人がいるのは信じません。それにメンバーになる人が、間接的には自らの既得権の保護、ないし利権の獲得のため、すなわち利己的な目的のために入会するという実状は否定できません。本音と建て前のギャップというわが社が持っていた永年の紛糾した自己矛盾に対する内外の批判に答える意味でも、またわたしたちの存在の目的を明らかにし、部外者の方々理解を得る意味でも、改革をする必要があったのです。

その改革の実現のための最初の施策が、この営利団体すなわち民営会社にするということだったのです。

Q:早い話が、利権獲得のため、既得権の保護のためにやっているんだから、営利団体だと有り体に言ってしまおう、ということですね。

A:ええ、まあ...

Q:それによって特に改められたことは何ですか?

A:わたしたちの多くが、内部が抱えている論理矛盾を詭弁を労して説明し、多くの貴重な時間が議論や弁明に費やされていた以前にくらべて、実質的な石工の活動に労力を集中することができるようになった。つまり本音を表面に出すことで、わたしたちが一体何をしているのだろうという疑惑の目で見られる心配がなくなったのです。これは大きな変化です。

Q:では、何をしているのかと問われたら?

A:「利益の追求をしている」と胸を張って言えるわけです。

Q:なるほど。でも、それではあまりにも具体性に欠けるとは思われませんか?

A:.....。

Q:つまり、企業活動の中身がそれではよく分からないと言うことです。質問の仕方を変えましょう。先ほど、「石工の活動」という言葉を使われましたが、それは具体的にどういうことを指しますか?

A:それは秘密です。(笑) いやいや、申し訳ない。われわれの組織は、超国籍的私設外交員人材派遣会社のようなものと考えていた頂ければいいかもしれません。それぞれの社員は、明確な目的を持って、必要に応じて国境や業種の枠を超え、複数の組織や国家間をパイプとなって、あくまでも人的な関係でつなぎ、平和的、かつ円滑な政治やビジネスの環境をつくると言うことです。

Q:しかし、そうした超国家的な組織の在り方が歴史家、批評家、政治家の間で槍玉としてあがったこともありましたね。

A:多国籍企業などというものは現在では当たり前です。(自由競争の時代ですよ、と言わんばかりに)

Q:ところで、具体的には、社員はそうしたビジネス環境を創出するのにどのような活動をしますか。

A:人と会い、握手をし、そして晩餐を伴にします。

Q:それだけですか?

A:まあ、そんなところです。

Q:どういった話をするのですか?

A:相手の関わっているビジネスに関してです。その人が自分の職場で困っていること、うまく行っていること、役に立つ知恵など聞き、またこちらもそうした話をします。

Q:どういった方が相手ですか?

A:他の企業や国で仕事をしている石工達です。(笑)

Q:(しばし絶句)...石工達ですか?

A:もちろん、それ以外の人もいますが。

Q:どんな方々ですか?

A:私たち側がこれから(株)石工に入って頂こうと思っている方々です。(笑)

Q:つまり石工の結社員か、これから石工の社員になるかもしれない人と話す。そしてそれが仕事だとおっしゃるわけですね。

A:そうです。

Q:なんとも...(つぎの質問はどうしたものかな、これは)