Archive for June, 2008

「意図的なインフレ策」としての原油価格高騰

Friday, June 13th, 2008

経済のことはよく解らないが、わからないなりに現今の原油価格高騰という現象の隠れた意図というものを考えた。

仮に、借金をしていてほとんど返済の見込みがないという人がいて、その人がモノの値段をある程度自由にコントロールできるとしたら、その人はあらゆるものの市場価格を上げて現金(貨幣)の価値を下げてしまうことを企図するかもしれない。動機の面でも技術の面でもそれが出来るのは合州国である。

貨幣の価値が下がり、膨大な量の現金を積まなくては何も買えないという状態が、インフレーションだ。インフレ策で得をするのは、通常借金をしている人間だというのは相場が決まっている。1億ドルの借金も、貨幣価値が半分になれば実質5000万ドルの借金と変わらないことになる。ハイパーインフレによって価値がもっと減って10分の1になれば1億ドルの借金は実質1000万ドルにしかならない。

返済が絶対に無理とわかった時点で、ハイパーインフレへと経済を振らせるという最後の手段は、常に合州国の手にあった。だが、どうやってモノの価格を上げるか? それは、やはり原油というあらゆる製品、そしてエネルギーの元である資源の価格を上げることが手っ取り早いだろう。

もちろん、インフレという現象に対して、生活者の給与がそれにぴったりと付いて行くのであれば、とりあえず上がって行く物価高の影響をあまり被らないが、まったく同時的にすべての価格が上がって行く訳ではなくて、「出来れば価格を上げたくない、上げたら客を失う」という恐れによって、多くの製造業者が、血のにじむような努力を強いられるだろうし、その努力のために、物価の全体的な高騰というのはある程度抑えられてしまう(これが今の状況だろう)。つまり、原油価格の高騰によって、すべてが公平に高くなる訳ではないのだ。まして、企業が労働者に支払う給与に、インフレ率が直ちに反映される訳ではない。

つまり、どういうことが起こるかと言えば、この原油高はすぐさま消費者の財布に収まる現金の量を増加させたりはしないということだ。後手後手に回されるこうした給与部分の増額は、必ず遅れるので、市場における価格の上昇に消費者は付いて行けない。結果として、その差分は消費者の生活費などの負担増という現象によって賄われるのだ。あるいは、製造業者の血のにじむような「据え置き価格」によって賄われる。

早い話が、こうした乱暴な原油価格高騰によるインフレ策というシナリオは、一番後手に回される一般生活者の、しかも底辺にいる者からふるい落とされるだろう… という最悪のシナリオを意味するのではなかろうか。

この異常な原油価格の高騰は、世界全体を「これまでにない未曾有のインフレ状態」へと舵を切ることの採用を決めた権力者たちの決意を感じさせるのであるが、それに感づき始めているひとびとが「勝ち組・負け組」という言葉を流通させ始めたに違いない。

この先に待っている未来とは、このたびの「秋葉原の無差別殺人」のような、持てないものが持てるものに対して揮う、嫉妬と羨望を動機とする範型的暴力事件を起こさせる土壌を、より広範に拡張するものである可能性が、高いのである。