Archive for August 16th, 2007

《実在する神》への付言(試訳)

Thursday, August 16th, 2007

星雲

「ヘルメス・クァトロスメギストゥス(四倍に偉大なヘルメス)」との威名を持つ予言者によると言われる、古メリシア語で書かれた、ある神学論的断章の刻まれた金属プレート──おそらく備忘録と想像される──が、人類による文明活動が認められる最も古い地層よりさらに古い地層からほぼ無傷で発見された。このような地層から金属プレートが見つかること自体が歴史概観そのものを見直さなければならないほどの異常なスキャンダルであったが、それにも加え見つかった文書の内容が読み解かれたことが更なる衝撃であった。そしてその内容自体が一考に値するものであることはいくら強調してもし過ぎることはあるまい。これは今や周囲にひどい塩害をもたらしつつある悪名高き塩湖たる紅海のほとりから偶然見つかった「ザラスシュトラの約束」を含む前世紀の考古学上の大発見、いわゆる「紅海文書」の重要さを越えるのではないかと言われるほどの意味を持った発見である。それはわれわれが忘れつつある《神の実在》についての、これ以上にない明解な回答を含むのもであったので、ここに採録する。(G.B.C.)

(引用開始)

神はいるのか、という問いに対して、私はためらいなく「いる」と答えるだろう。

だが、全知全能をその定義とする神ならば、「実在する神はそのようなものではないだろう」と言う以外にない。《実在の神》はそのような種類の神であろう。だから、《実在の神》は、人類の多くが信じようとしている類の神よりも、はるかに無慈悲である。いや、慈悲の対象であることさえも忘れ去っているのが、《実在の神》なのである。それでは「神は不在である」とか「神は死んだ」と宣言するのと変わらないではないかと誰かは言うかもしれない。その言葉は、かつての世界において、「失われた神への信仰」の最終局面でニケ(ナイキ?)*によって声高に宣言された言葉だが、神は不在でもなければ死んでもいない。宇宙史的な時間の中で、億千万年の昔に死んだことはあるかもしれないが、われわれの神は実在する。なによりもわれわれが生きていることがその証しである。(略)

[訳注* 正確な発音は不明。一般に神話上の「有翼の女神」ともいわれるが、太古の時代に実在したある神学者で、男性であったという説もある。]

問題は、神の性質ということに尽きよう。

(more…)